『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』──エヴァ世界の理(ことわり)を超えた新たな物語の誕生

視聴者側にとって「観たいエヴァ」、制作者側にとって「作りたいエヴァ」──「エヴァらしさ」というのは、すべて旧作版に含まれている。そこからはずれたものは「エヴァではない」という烙印を押されてしまう。

それほどまでに、旧作版『エヴァ』は堅固な物語です。

『序』は、映像や音声など「見せ方」はバージョンアップしていますが、物語は旧作を踏襲しています。

『破』は、マリという新キャラクターが登場しましたが、小娘がひとり増えただけで、作る側も観る側も大騒ぎになりました。

でもって、新劇場版の第3弾の『Q』です。

「エヴァ」の新作として、登場人物を増やしたり、メカの数を追加したり、世界観に関わる設定をもう少しだけくわしく語ったりする。 それは我々の想像・期待の範疇でしょう。制作者側にとっても、順当な作業といえます。エヴァという「堅固な物語」を変えることにはならないからです。

たしかに『Q』でも、新キャラクターが増えていたり、新しい機体や見慣れない装備が登場したりしています。これも今作の見どころではあります。

しかし、今作の最大の“暴挙”ともいえるチャレンジは、既存のキャラクターのベクトルや立ち位置を180度転換させる、というものでした。

──エヴァ世界の理(ことわり)を超えた、新たな「エヴァ」の誕生。代償として、古(いにしえ)の物語は滅びる。

ひょっとしたら我々はこんなエヴァ「も」、観たかったのかもしれません。 ひとつの物語、1本の映画、アクション・アニメとして観れば、傑作であることは間違いありません。 でも、旧作版に親しんだ者としては、どこか寂しさも覚えずにはいられない。 そんな作品でした。

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