日本製ホラーのなかで、アニメというジャンルはノーマークであった。いざフタを開けてみると、これがまた恐るべき表現形式であることを思い知らされた。
この『化猫』は、アニメといっても、いわゆるアキバ系の売れ線の絵柄とは一線を画する。浮世絵をモチーフにしたような、まさに日本の伝統的様式美の趣。およそホラーとは結びつかない代物。にもかかわらず、この怖さはなんだろうか。
この物語の主人公は、化猫が現れても、すぐには退治しようとしない。「マコト(真)」と「ことわり(理)」「カタチ(形)」を見きわめるまでは、必殺の剣が抜けないからだ。
“真実”の追究によって明らかになるのは、なぜ化猫が現れたかという因果であるが、そこには人間の恨み辛みが含まれている。
人間の業のようなものに真正面から向き合わなければならないというのが怖さの最大の原因である。
「人間の業」の表現は、実写映画よりも、抽象化されたアニメのほうが適している、ということがこの作品からは認識できる。
また、自らの表現方法の本質に確信を持ち、世に送り出した制作陣に敬意を表したいところだ。
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