今野晴貴『ブラック企業 日本をくいつぶす妖怪』──ブラックなのは「会社」ではなく「社会」 2012.12.05 「ブラック会社」という“概念”は、一般的にも認知度が高まり、問題意識を持つ人も多くなっているかと思います。しかし、世の中には「ブラック会社」と「ブラックでない会社」があり、前者を非難追究する、という態度に陥りがちです。少なくとも私がそうでした。そうなってしまう理由は、「ブラック会社」というも
『アクションゲームサイド』Vol.A発売!──ゲームをより楽しむためにレビューを書こう![番外編] 2012.12.02 自分の好きなゲームについて熱く語るゲーム雑誌『アクションゲームサイド』Vol.Aが12月3日に発売されます。これは『ゲームサイド』に掲載されたアクションゲームの記事を集めたものです(新作記事もあり)。ぎゃふん工房は〈「セガ道」師範代〉として、 『ウッディポップ』(セガ・マークII
斎藤貴男『私がケータイを持たない理由』──やっぱりここらで立ち止まって考えたほうがいいよな 2012.10.30 ケータイを持たないと公言しているか、「たぶんこの人は持っていないだろうな」と想像できる人がいて、斎藤貴男氏も後者のひとりでした。斎藤氏はジャーナリストであるからして、そして新書の体裁として、本書では“社会的な”考察がなされているわけですが、それはそれでよいとして、ケータイ否定論は「使わないから」
大橋悦夫『「手帳ブログ」のススメ』──具体的な活用法をもう少しちょうだい 2012.09.10 現在、本職の仕事のほうで「手帳術」のムックを制作しています。さまざまな手帳の専門家に取材をしていると、手帳はスケジュール管理や備忘録としてだけでなく、〈自己実現〉〈自己発見〉のための道具として使っている人が多いことがわかります。翻って自分のことを省みてみると、「〈自己実現〉〈自己発見〉はブロ
貴志祐介『悪の教典』(上)(下)──絵に描いたような貴志ワールドは嬉しいかも 2012.08.31 このブログでは、貴志祐介を「心の闇を描く作家」と勝手に決めつけています。で、前回読んだ『新世界より』には、あまり「心の闇」が出てこなかったのが残念だったと書きました。満を持して『悪の教典』ですが、もうタイトルが示しているように「心の闇」でございます。テイストとしては『クリムゾンの迷宮
貫井徳郎『乱反射』──読後にどう受け止めたらよいか困惑する 2012.07.08 とある幼児の死──それは人々のちょっとした自己中、身勝手さが招いた悲劇だった。「自分の行為によって人が死ぬかもしれない」など、誰も思っていない。その意味で誰にも責任はない。でも、その中のひとりでも、もうちょっとだけ倫理観を持ち合わせていたら、ほんの少しでも罪悪感を感じていたら、子どもは死なな
国家を作ろうとするものが暴力的であるのは必然である──大田俊寛『オウム真理教の精神史―ロマン主義・全体主義・原理主義』 2012.06.24 オウム真理教が異世界からやってきた侵略者たちではなく、あくまでわれわれの社会から生まれたものであるならば、その根拠もまたわれわれの社会にあるはずだ。──と考えたのは17年前。一連の事件が起こっているときでした。では、具体的に〈根拠〉とは何か。これが永らく謎であったわけですが
『地震イツモノート』──防災対策は“気づき”のゲーム 2012.05.06 地震対策は、運否天賦のギャンブルではなく、愚図から滑り落ちていく、“気づき”のゲームである。これが当ブログの考えです。本書は、その“気づき”の参考になるでしょう。理屈めいた御託は述べずに、ただひたすら被災者(東日本大震災ではなく17年前の阪神大震災のそれ)のアドバイスを羅列した、ちょっと変わ
石持浅海『Rのつく月には気をつけよう』──これまた「推理ショー」の見事な舞台装置 2012.04.19 「推理ショー」を行なうための魅力的な舞台装置を用意する。その手腕は他の追随を許さない。このブログでは石持作品をそう評してきた。今作は、ご多分に漏れず「推理ショー」が堪能できるわけだが、何か事件が起こるわけじゃない。気が置けない仲間たちが酒と肴を楽しみながら、“人間関係”の機微について、ちょっと
鈴木光司『エッジ』──角川ホラー文庫で出さなければ… 2012.04.11 角川ホラー文庫である。にもかかわらずまったく怖くない。「ホラー文庫だから怖くなければいけない」などとケツの穴の小さいことはいいたかないが、しかしところどころに「おっ、怖くなってきたぞ」と感じさせる部分があるだけに始末が悪い。鈴木光司といえば『リング』。これも角川ホラー文庫であったが、まったく