『第9地区』──チープでもいいのにカッコよくしたところが正解

南アフリカ共和国が物語の舞台で、異文化・異種間同士の争いを描いているということで、作り方によっては、いくらでも寓話的・教訓めいたものを含ませることはできるのに、あくまで観客に深く考えることを要求しない娯楽作品に仕上げたところがミソだ。

この方向性であれば、エイリアンも人間が着ぐるみを着ているような、もっと安っぽいものにするという選択肢もあったはずだが(ほかの監督だったら絶対そうしたはずだ)、本作では卓越した映像技術でエイリアンを造形している。

劇中に登場するパワード・スーツみたいのも無駄にカッコイイ。デザインだけでなく、編集のリズムで心地よいリズム感を生み出しているところがまた憎い。

とにかくアクションシーンの力の入れようが尋常ではないのだ。

娯楽作品としてのカッコよさ・気持ちよさで、寓話的・社会派的要素をオブラートに包み、「難しいことは各自で勝手に考えてくれ」という良い意味での開き直りがこの作品を成功に導いている。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


おしらせ

現在は〈ぎゃふん工房の作品レビュー〉gyahunkoubou.comにて更新しています。

こちらの記事もどうぞ

  1. 【声優学入門】『名探偵コナン』の世良真純のキャスティングに腰が抜けました

  2. 【カクスコ名言集】「幸せってこういうもんかもしれないなあ」

  3. 藤本美貴『MIKI(1)』(CD)──このコは見た目ですごく損をしている

  4. 高倉克祐『世界はこうしてだまされた』シリーズ(本)──事実を見極める目を養うということ

  5. 〈アジェンダ・セッティング〉(仮)とは?──「もんだい問題」ぱーと3

TOP