いろいろなところで「つまらない」という意見を目にするので、あまり期待せず、時間潰しのつもりで鑑賞。そんなマイナスのバイアスがかかっていたせいか、見終わってみると、意外に満足している自分に気がついた。
フェイク・ドキュメンタリーは、「いかにも本物らしく作ってあるもの」と「どうせウソとわかっているのだからと制作者が好き勝手にやってしまっているもの」の2つに分かれる。前者の例としては『食人族』『ブレア・ウイッチ・プロジェクト』『パラノーマル・アクティビティ』「ほんとにあった呪いのビデオ」、後者としては『ノロイ』『クローバー・フィールド』「裏ホラー」などが挙げられる。
とすると、この『フォース・カインド』はどちらにあてはまるのだろうか?
“本人”役の俳優が出てくる“実際の映像”部分が前者、ミラ=ジョヴォビッチが登場する再現映像部分が後者といったところで、つまりは2タイプが融合した映画ということになる。
なるほど。これはなかなか新しい手法ではないだろうか。その意味で実に興味深い映画と言える。
とくにミラ=ジョヴォビッチがごく普通の役柄で登場するのは久しぶり(というか個人的に見るのは初めて)で、これも見どころのひとつ。なんとも魅力的な心理学者さんではありませんか。
つまり、綺麗な女優・映像・音声によって、娯楽作品としての〈ドラマ〉をしっかり見せておこう、というのが制作者の意図だろう。これは評価したい。
惜しむらくは、「アブダクション」というテーマそれ自体が古典的なもので、今さらこれを映画化しても驚きが少ないということだ。
おおよその展開や物語の〈真実〉は、はっきりいって鑑賞前から予想がついてしまうのだ。
もっと「アブダクション」に対する新しい解釈というか、発展させた〈何か〉を見せていただけないと、映画としておもしろみに欠けてしまう。
どうせなら『フォーガットン』くらいハジけてくれたらよかったんだがね。じつに惜しい。
【9月23日 追記させてください】
★ご存知の方も多いと思いますが、ミラ=ジョヴォビッチが演じるところの心理学者は、「本人」として登場する女性もCharlotte Milchardさんというれっきとした女優さんが演じる架空の人物です(http://www.imdb.com/name/nm2598903/もご参考に)。
つまり劇中「実際の映像・音声」とされている部分もすべてフィクションであるわけです。
もちろん、すべてが作り物であることを前提としても、楽しめる部分はあるだろうというのがこのレビューの趣旨です。
★上記のフェイク・ドキュメンタリーの分類について述べた部分に誤りがあったので修正しました。
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