「今年のライブはミュージカル仕立て」というのを聞いて予想したことは、「MUSIC IS MY THING」のプロモーションビデオをさらに大げさにした感じの“軽薄路線”であった。
もちろん、“軽薄”自体は非難に値しない。われわれはすでに路線変更を受け入れているのだし、“軽薄”であることが直ちにライブの、ひいてはdreamというアーティストの価値を下げるわけではない。
しかしながら、今回のライブで展開していたのは、「生きる」をテーマにした本格派ミュージカルであった。
恋に人生に悩む少女たちの重厚な物語。「Believe in you」「Message」「願い」といった旧dreamの名曲、いや“名詩”が次々と登場する。
思えば、旧dreamの、とくに後期の歌はまさに「恋に人生に悩む少女」の人生観・世界観の発露であった。それが今、「役者が物語を演じる」という、これまでのdreamになかった新たなスタイルで展開していくのだ。
これは、旧dreamファンにとっても嬉しい誤算であったと言えよう。
まるでこのミュージカルのために書かれたのではないかと錯覚してしまうほど、それぞれの詞の哲学が見事に適合している。
部分的には、メンバーたちの歌唱力・表現力に若干の不安定感はあるものの、それは元の歌の完成度が高すぎるからであって、将来性という意味では期待感を持つことすらできる。
また、等身大の役柄を演じていることもあって、決して“学芸会”にはなっていない演技にも注目したい。
もちろん、ミュージカル・パート以外でも、ハロープロジェクトのシャッフルユニットのような趣向が登場するなど、見どころは多い。
そして、是非とも言及しておかねばならないのが、YUとKANAであろう。YUの「エロかわいい」、KANAの「クールでかっこいい」というそれぞれの持ち味がさらに深化し、dreamをして単なる小娘の集まりに堕することを回避している。
dreamは変わった。新dreamのデビュー時と変わったのだ。旧dreamの路線はしっかりと受け継がれている。とはいえ、まったくそのまま同じということではないから、今後どのような展開を見せるのか、期待が高まるところである。
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