春橋哲史『疫病惑星を封鎖せよ』──空想科学の〈ワクワクドキドキ〉に浸れる本格正統派SFストーリー

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春橋氏の前作をこのブログでレビューしたのは2005年。実に5年の歳月をかけて練り込まれた超大作だ。
前作は、ディティールの描写に重きが置かれていた(ように思われた)が、本作では細部の説明は抑えられ、そのぶん読者が行間を読み〈空想する余地〉が増えた。
「伝染病によって多数の死者が出る」という凄惨な物語であるが、マシンやメカが登場する〈未来世界〉が自分の頭の中に構築されていく臨場感。
元オトコノコとしては〈ワクワクドキドキ〉感を禁じえない。
クライマックスで主人公に突きつけられる「究極の選択」は、物語の必然としては、どちらを選ぶことも可能だろう。
しかし、おそらく作者の分身であると想像されるこの主人公が選んだ道には大いに共感できるところで、物語全体のたたずまいを快いものにしている。
あえて読者の勝手なわがままを言わせてもらえば、物語展開にもっと〈ワクワクドキドキ〉がほしかった。
人々が疫病にかかり死んでいく機序が少しずつ明らかになるとか、「シグマ計画」が密かに進展していくなど、サスペンスの要素があるとよかったと思う(まあ単純に好みの問題だが)。
それはともかく、〈本格正統派SF〉に餓えている人は必見の一冊である。

『疫病惑星を封鎖せよ』
著者:春橋哲史
出版社:文芸社
価格:1470円(税込)

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