『君の望む死に方』──舞台設定は特殊だが正統派の本格推理ショーが堪能できる

余命6か月というガン告知を受けた大企業の社長。彼は自らの贖罪のため、殺されて死ぬ最期を選ぶ。贖罪の相手を含む社員たちを研修の目的で呼び寄せながら、“犯行”の準備を整えていく──。

個人的な読書体験としては、2つめの石持作品となります。

前回が「絵に描いたようなミステリー」だったのに対し、今回は舞台設定がきわめて特殊です。

“犯人”(正確には“犯人役”)も“犯行方法”もあらかじめ明らかなことから、〈倒叙ミステリー〉に分類することも可能でしょうが、やはりその枠からも外れています。

研修のゲストとして招いた人たちの中に、『扉は閉ざされたまま』にも登場した碓氷優佳がいたことから、社長の思惑は狂い始めます。

優佳は、事件がまだ起こっていないのに、“殺意”の存在だけをいちはやく嗅ぎ取って、真相を推理していきます。

そして、物語の終盤からは、本格推理ショーが展開します。

舞台設定こそ奇をてらったものに見えますが、実際は前回同様、推理の「ロジック」を純粋に堪能できるようになっているのです。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


こちらの記事もどうぞ

  1. 新聞の役割──〈アジェンダ・セッティング〉プチ講座

  2. 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(映画)──「破」壊したもの、しなかったもの

  3. 『自殺サークル』──〈無関係〉という〈関係〉がある[再レビュー]

  4. 『屍鬼』──声優チェック

  5. 松浦亜弥『松浦シングルMクリップス1』(DVD)──“女狐”がその正体を見せたとき真の恐怖が始まる

TOP