春橋哲史『太陽系を縦断せよ』(本)──往年の本格SFの匂いが漂う本書は<物語>ではなく<ディティール>を読め

タイトルはスバリ『太陽系を縦断せよ』。ようするに「太陽系を縦断」する話だとすぐわかる。まさに直球。このタイトルに象徴されるように、往年の「宇宙モノ」小説を現代に復活させた正統派の本格SFなのである。

もくじを開いてみよう。「第2章 出港」「第3章 事故」「第4章 復旧」……などと、ストーリー展開が早々に披露されている。ネタバレ覚悟、というよりも、物語そのものはオーソドックスなものして奇をてらわず、別の部分で勝負をしようというわけだ。(だから「太陽系を縦断する」とみせかけて「実は違いました」ということはもちろんない。)

では、勝負をかけている「別の部分」とは何か。それは、<ディティール>の描写だ。宇宙船内にはどんな設備が作られ、どのような手順で操縦されているのか、登場人物たちはどのような服を着、道具を持っているのか、などの詳細が念入りに書き込まれている。

したがって、予想を裏切るような(近ごろ流行の)“意外な展開”などは期待せず、<ディティール>の具体的な映像を頭に浮かべながら、「本格SF」の重厚な雰囲気にドップリと浸るというのがこの本の正しい読み方であろう。

本当のことを言えば、ラストの展開は予想できなかった。しかし、「正統派の本格SF」のファンには馴染みの深い設定が用いられており、往年の「宇宙モノ」の匂いは失われていない。

約370ページ(厚さ2.5cm)、執筆に5年を費やした超大作。読みごたえは十分である。

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