今野晴貴『ブラック企業 日本をくいつぶす妖怪』──ブラックなのは「会社」ではなく「社会」

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「ブラック会社」という“概念”は、一般的にも認知度が高まり、問題意識を持つ人も多くなっているかと思います。
しかし、世の中には「ブラック会社」と「ブラックでない会社」があり、前者を非難追究する、という態度に陥りがちです。
少なくとも私がそうでした。
そうなってしまう理由は、「ブラック会社」というものが社会的にどのような意味を持っているのかがよくわからないことです。
そして、なぜわからないかというと、「ブラック会社」というのは、ある特定の企業を指すのではなく、〈社会の状態〉そのものを表す言葉だからです。
だから、いち企業である「ブラック会社」だけを問題にしても仕方がないわけです。
つまり、「ブラック会社」ではなく「ブラック社会」と表現するほうがより正確でしょう。
ただ、まあなんとなく、この本を読む前から、あいまいながらもそんな気はしていたので、新たな発見というほどではありません。
しかし、では具体的に「ブラック企業」が社会に与える影響とはどんなものなのか、というところまで考察が進んでいなかったのも事実です。


社会全体が引き受けるコストは、鬱病に罹患した際の医療費などのコスト、若年過労死のコスト、転職のコスト、労使の信頼関係を破壊したことのコスト、少子化のコスト、またサービスそのものが劣化していくといった、あらゆるものに及ぶ。

上記はほんの一例ではありますが、この本を読むことで、その「具体的な影響」がわかり、目からウロコの心境です。

【ブラック企業 日本をくいつぶつ妖怪】
今野晴貴
文春新書
¥809

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