『BIOSHOCK(バイオショック)』──誇張とリアルの奇妙なバランス

ゲーム空間の中にリアルな世界を構築し、“あたかもその中に入り込んだかのような”感覚を味わえるというのは、もはや特徴と言えないだろう。

もっとも本作はXbox360の初期のゲームであり、リアルな世界の構築という点で、フォロアーに多大な影響を与えていることは間違いない。しかし、2010年の今となっては、「リアルな世界」は特筆すべきことではないのも確かだ。

では、『バイオショック』で見るべき点とは何か。

それはリアルというよりむしろディフォルメされた世界観だ。もっとピンポイントでせめるならば、敵キャラクターの挙動にそれは象徴されている。

近年のゲームは、モーションキャプチャーの技術を使い、実際の人間の動作をトレースしてキャラクターの動きを作るのが主流だ。

『バイオショック』も、制作過程においてはモーションキャプチャーを使っているのかも知れないが、結果的にはかなり修正を施し、ディフォルメされたものになっている。

“あたかもその中に入り込んだかのような”感覚に陥るものの、目の前に展開しているのはリアルな世界ではないのだ。

これが他のFPSや、似たような設定・仕様の『コンデムド サイコクライム』とは微妙に異なる点だ。

社会が持つべき倫理観が崩壊し、おかしくなってしまった人々が徘徊する世界という設定でありながら、場内のアナウンスや看板、肉体改造をする商品のコマーシャルなどはどこか楽観的で、プレイヤーにとっても与しやすいものになっている。

プレイ中は適度な緊張感を強いられるものの、ホラーゲームほどではない。次にすべきことを懇切丁寧に指示してくれるので、行き詰まることもない(もっともこれに対し「お使いゲーム」と非難する声はあるだろう)。

なんだか夢の中の世界をさまよっている感じ。

これが『バイオショック』の真の魅力なのだと思う。

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