昨年末の大掃除の際、なんとなしにNHKラジオをつけながら作業に勤しんでいると、どこかの会場で行われたアニソンのライブの模様が流れてきました。
水木のアニィ以外の歌手は誰かわからなかったのですが、そのうちのひとりが「今回は○○(ライブの会場がある県)に来させていただいて…」と言っていました。
…来させていただく? 普通に「来て…」でいいんじゃない?
この「…させていただく」という表現を最近よく耳にします。
テレビ番組で映画の告知(宣伝)にやってきた俳優さんとかが「この映画に出させていただいて…」などと言ったり。
暇つぶしの手段としてはほとんどニコニコ動画に移行し、テレビ番組の視聴は必要最低限にしている私ですら気になるのですから、「…させていただく」は、テレビなどのメディアでかなり氾濫していることが想像できます。
たしかに、タレントや俳優は、オファーがあってはじめて仕事が成り立つ「受注型」「待ち」の職業ですから、「…させていただく」という物言いは、本人の心情を率直に表したものとして理解できます。
しかし、個人的な言語感覚からすると、仕事を発注した人(テレビ局のプロデューサーとか)に対するものならばともかく、テレビ番組という視聴者を意識した場面で発する言葉としては、へりくだりすぎて、かえって慇懃無礼な感じが醸し出されてしまうのです。
なにか問題があっても、オレのせいじゃないぞ。文句があったらキャスティングしたスタッフ、仕事をとってきた事務所に言えよ、というような“責任回避”の気持ちが無意識に働いているのではないか、と邪推をしてしまいます。
映画『ガメラ 大怪獣空中決戦』で、どうしても長峰役がやりたくて、マネージャーをとおして台本を入手し、セリフをほぼ暗記してオーディションにのぞんだという中山忍が「出演させていただいて…」というのなら違和感はありません。それだけ「絶対にガメラに出るんだ!」という熱意があったことがわかれば。
先のアニソン・ライブの例でも、その人は○○県への出入りが禁止されており、けれどもどうしても歌いたくて、特別に許可をもらってやっと「来させていただいた」というのなら納得できます(ま、そんな状況はまず考えられませんが)。
もっとも、言葉というのは流行り廃りがあるので、以前はよく耳にしていたけれども、最近はあまり使われなくなった表現もあります。
たとえば、語尾に「…ですか」をつける言い方が一時流行しました。
20年前の資料にこんなことが書かれています。ある料理番組のヒトコマ。
『ナースステーション』第5巻(原作:高山よしのり/漫画:田中つかさ/出版社:集英社)より
これも最近はとんと聞かれなくなりましたね。
とはいうものの、先日放送のすイエんサーで「笑うとついつい手をたたいちゃうのって、なんでなの~?」という疑問の答えとして、テレビの影響が指摘されていましたが、リアルの世界でも「…させていただく」という言い方をする人が出てくる可能性があります。
そうなったらちょっと気持ちわるいな〜と思います。
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