『裏ホラー』(DVD・ネット)──女性が“汚される”ことへの嫌悪と憧憬

ホラー・プロデューサーの一瀬隆重氏が仕掛けた新感覚の恐怖。『ほんとにあった呪いのビデオ』などのように、〈幽霊〉が落とし所でないところが新しい。

では、『裏ホラー』で恐怖のエッセンスとなっているものはなにか。それは、女性が“汚される”“壊される”“犯される”ことへの嫌悪と憧憬である。

大きな白い紙を1枚敷いたようにきれいに降り積もった雪の上をドカドカと足跡をつけてみたくなる衝動。美しく咲いた花を「折りたくなってしまう」気持ちを自分の中に発見する恐怖。

これが『裏ホラー』の恐怖のエッセンスである。

その観点からあらためて各エピソードを見直してみると、「ストーカー」はそのものズバリだし、「襲われたアイドル」もわかりやすい。「呪いの祠」「スプーン曲げ」「幽体離脱」「飛び降りる女」「手を振る女」は、本来“そうなる”のは男でも十分成り立つはずなのだが、『裏ホラー』においては、女性でなければならなかったのだ。

「謎の肉玉」は、一見すると法則から外れるように思えるが、上記の観点を念頭におけば、“女性の一部”を弄んでいるように見えてくるだろう。

ただ、制作者がどこまで上記のエッセンスを自覚していたかは疑問だ。「トシオさん」のラストは、カメラがもっと近くに落ちるべきだったし、「念写」で写るのは若い女性のほうがよりよかっただろう。

もちろん、『裏ホラー』の見方は性別によっても異なるにちがいない。女性は「こんな目に会うのは嫌だ」と思い、男は「こんなことがあってはいけない」と思いながら「もっとやれ」という邪念も抱く。

ホラー作品において、幽霊や怪物に襲われるのは、たいてい若い女性だ。それは「おじさんが怖がってるのは見たくない」という理由もあるが、美しいものが汚されることへの嫌悪と憧憬がホラーの重要な要素になっているからでもあるのだ。

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