奥田英朗『最悪』(本)──小石を積み上げた「砂上の楼閣」が崩れ去る快感

この物語の主人公は3人。不況にあえぐ鉄工所社長、家庭問題や勤め先のセクハラに悩む銀行員、ヤクザに弱みを握られたチンピラ。少しずつ綻びを見せていくこの3人の人生・生活が丹念に描かれていく。無縁だった3人の関係が交差するとき、それぞれの人生が「砂上の楼閣」であったことがわかる。「砂上の楼閣」といっても、容積の大きい材料をクレーンか何かを使って構築していくのではなく、この作品の「材料」は、言わば小石。少しずつ少しずつ、途中で崩れ去り、いちからやり直しになりながらも、根気よく積み上げていく。それがクライマックスでガラガラと崩れ落ちるという快感。破滅へのダイビング。このカタルシスを存分に堪能していただきたい。
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【最悪】著者:奥田英朗/出版社:講談社文庫

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