貴志祐介『悪の教典』(上)(下)──絵に描いたような貴志ワールドは嬉しいかも

このブログでは、貴志祐介を「心の闇を描く作家」と勝手に決めつけています。

で、前回読んだ『新世界より』には、あまり「心の闇」が出てこなかったのが残念だったと書きました。

満を持して『悪の教典』ですが、もうタイトルが示しているように「心の闇」でございます。
テイストとしては『クリムゾンの迷宮』『天使の囀り』に近い感じで、典型的な貴志ワールドが炸裂し、古くからのファンを楽しませてくれます。

といって、いたずらにファンにおもねるわけではなく、作者自身が書きたいものを書いていることが感じられる点が、これまたファンにはうれしいところです。

クライマックスも読者サービス満点で言うことなし──ではあるのですが、「サービス満点」であるがゆえに、かえって「わがままな読者心」が持ち上がってしまい、「いやクライマックスは凡庸だな」という思いすら抱いてしまうのです。

こういうクライマックスでなかったらなかったで「凡庸でもいいから、もっと盛り上げて欲しかった」という感想を持つことは間違いないのですが。

典型的な貴志ワールドを愉しむのか、それとも別の世界を期待するのか。じつに身勝手で贅沢な悩みなのですが、それも貴志作品の魅力のひとつということで。

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