ホラー映画『13日の金曜日』で裁判のおべんきょ

ホラーというかスプラッター映画の名作に 『13日の金曜日』シリーズというのがある。

知らない人のために簡単に説明すると 「ジェイソンと呼ばれる殺人鬼が キャンプ場にいる若者たちを殺しまくる」 という、じつに教育上よろしくない (でもオレらホラーファンにはウハウハな)作品だ。

とくに近ごろの社会状況から考えて 絵に描いたような「子どもに悪影響を及ぼす」 (と言われかねない)映画なのだが、見方によってはじつに示唆的な要素が含まれている。

以下『13日の金曜日』シリーズのネタバレが含まれます。

そもそもジェイソンはなぜ人殺しを行うのだろうか。

ジェイソンは、かつてキャンプ場で溺れ死んだ少年だ。 本当は現場には監視員がいたのだが、 任務そっちのけで“よろしくやってた”おかげで 不幸にもジェイソン少年は命を落してしまったわけだ。ジェイソンが“いちゃいちゃしている男女”を標的に 襲ってくるのには、そんな理由があったのだ。

ところで、法学的センスをはたらかせると、 ジェイソンの死は、業務上過失致死(過失の殺人) と考えることができる。 つまり、この作品でジェイソンがやっていることは 「殺人」への報復としての「殺人」ってわけだ。

これをつきつめていくと、『13日の金曜日』シリーズは死刑制度について考えさせる映画ということになる。

もちろん、ジェイソンのやっていることは 「自救行為」とか「私刑」ともいうべきもので ぼくたちの知っている死刑とはだいぶ性格がちがう。 ちがうけども、共通するものがあるはずだ ──っていう感じで、どんどん考えは膨らんでいく。

もうすこし考察を進めよう。

『13日の金曜日』の第1作目は (ここが最大のネタバレなんだけど) ジェイソンの母親が殺人鬼である。

つまり、遺族(母親)が 殺された息子の無念を晴らすために 殺人を犯している格好だ。

さらに──。

ジェイソンや母親の殺している若者たちは ジェイソンの死とは関係がない。 (溺れているのを見逃した監視員ではない) つまり、ぬれぎぬ、〈冤罪〉だ。

──こんなふうに 人によっては害悪としか思えない ホラー映画である『13日の金曜日』シリーズにこれほどまでに含蓄があったとは!

とくに裁判員制度が始まり、 殺人を裁くということに対して、これまで以上に関心を持たざるを得ない時代においては、がぜん『13日の金曜日』が輝きを放ち、社会的な存在意義が高まってくる。

「子どもに悪影響を与える」どころか NHK教育テレビで放映してもよいのではないか と思えるほどだ。

ただ、純粋なホラーとしては 「わけもなく殺しまくる」ほうがおもしろいんだけどね。

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