お正月に考える戦争と平和シリーズ。最終日の今日は、14年前にもミニコミ誌で取り上げたことがあるのですが、藤子・F・不二雄先生のSF短編「宇宙船製造法」(『みどりの守り神』中央公論社に所収)をご紹介したいと思います。
物語は宇宙船がとある惑星に不時着したところから始まります。 宇宙船は航行不能になってしまい、乗組員たちはこの惑星で生活を始めます。
幸い、この惑星は地球とよく似た環境で、外敵もいないようでした。 彼らは一丁だけ銃を持っていました。 最初は動物を狩るために使用していたのですが、ちょっとしたイザコザから、それは仲間に向けられます。
▲銃は食料確保のために使われていました(ただし、この使い方は仲間たちの同意を得たものではありませんでした)。銃を手にした男はそれを仲間に向けてしまいます。
武器を手にし、気を大きくした男は横暴のかぎりをつくします。
▲男は王様気取りです。かたわらには腰ぎんちゃくのような人物もいます。
そこで、ほかの乗組員たちはみんなで示し合わせてこの男の“武装解除”を試みます。
▲男は自らの“犯罪性”に気づいていなかったようです。このあと男は監禁されてしまいます。
さて、問題の銃は全員の同意にもとづいてリーダー的存在だった男が所有することに決まりました。
やがてリーダーはみんなで決めたルールが守られているかどうか、監視するようになります。
▲8人だけのちっぽけな社会で“法”が定められていきます。
リーダーは“法”を破った者を制裁する役目も負っていきます。
▲リーダーの行為はあくまでも“法”にもとづく正しいものなのです。
物語の終盤では、リーダーの持つ銃は仲間に向けられます。
▲前に銃を向けた男と動機は違うのですが、仲間を撃つという同じ結果になってしまいました。
この作品は「宇宙船製造法」というタイトルが示すとおり、銃の使い方に主眼をおいたものではありません。あくまで乗組員たちが地球に帰還できるかどうか(壊れた宇宙船をどうする?)を読者への“惹き”として物語が進んでいきます。
しかし、社会とは何か? 法とは? 暴力装置や権力の本質とは? などのエッセンスが凝縮された作品となっています。
この作品は1979年の『週刊サンデー』に掲載されたものですが、現在の国際社会の状況を見事に言い当てているような気がします。 藤子・F・不二雄先生の創造力と想像力、洞察力がいかんなく発揮された傑作と言えましょう(この作品が収録されている『SF短編集』が絶版なのが惜しまれます)。
ふと、今日の朝刊(『読売新聞』)に目をやると、自衛隊と韓国軍の協力強化をうたう共同宣言の発表を政府が検討していると報じています。
〈軍事的緊張〉を高めることで〈軍事的脅威〉に対処する方法は旧世紀の遺産(それも負の遺産)です。 軍事的合理性を徹底的に排除し、あらゆる非軍事的な手段を用いて「脅威」を減らしていくことが21世紀の安全保障なのです。
そのために何をすべきか。 このブログでも引き続き研究していきたいと思っています。
御無沙汰です。
正月早々、工房に似合わず随分硬派な内容ですね。それでも大切なことは、真面目な内容を取っ付きやすい素材を使うやり方ですね。
最近のマスコミの議論は、物事を単純化したり、結論を早急に求めたりとして、流れを作ろうとした向きがありますね。騒がしくて無茶苦茶が故に面白いのですが。
サンデル教授ではないが、正義というものを少し深く考える必要がありますね。「宇宙船製造法」は読んでみようと思います。
また議論しましょう。
たまたま農園さん、こんにちは(*^-^)
コメントありがとうございます。
「硬派な内容」を「取っ付きやすい素材」で語るというのが今回の趣旨でしたが、それをきちんと読み取っていただいたようで嬉しく思います。
ぜひまたコメントをお願いします( ̄▽ ̄)