佐藤正午『ジャンプ』(本)──彼女がデートの最初に「よそよそしい」理由は?

自分の彼女が「5分で戻ってくる」と言ったまま行方不明になってしまい、その失踪の真実を延々と探っていく。

失踪の理由は、極めて低い可能性、それはもう俺が松室麻衣ちゃんと同棲してしまう、あるいは俺が藤本美貴と結婚してしまう、というのよりさらに低い可能性で起こった偶然によるもの、であるように読める。

しかし、実際は違う。

答えは、失踪した彼女とは別の交際相手(浮気相手)が、デートの最初の15分間、なぜかいつも主人公に「よそよそしい」ことの理由にある。

すなわち、主人公自身の態度がデートの最初はいつも「よそよそしい」こと。だから、相手もよそよそしくなる。

一見すると自分とは無関係の、自らの責任の埒外で起こった“失踪”であったように思えるけれども、実はすべて自分の「態度」に起因していたのだ。

この着地のさせかたが痛快であり、軽やかな“読感”ながらも、含蓄のある作品だなあ、としみじみ感じ入ってしまった。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


こちらの記事もどうぞ

  1. 『バイオハザード 4』(ゲーム)──ルールの変更は「恐怖」ではなく「嫌悪」をもたらした

  2. 郡上八幡に行ってきました

  3. 【死刑】自分が殺されても賛成・反対できるか?

  4. ZARD『Golden Best 15th Aniversary』(音楽)──十代、二十代の小娘には出せない、坂井泉水の女性ならではの包容力とやさしさ

  5. 『自殺サークル』──〈無関係〉という〈関係〉がある[再レビュー]

TOP