人は他人に暴力を振るってよいと潜在意識の中で思っているのか?──映画『CURE』の恐怖

『読売新聞』(2012年5月25日付)によると、駅構内で乗客が駅員や乗務員に対して暴力を振るう事例が年々増加しており、加害者の75%が飲酒をしていたそうです。
「加害者の75%が飲酒」と「飲酒している人の75%が暴力の加害者」を取り違えないよう注意しつつも、しかし、飲酒による暴力が意外に多いことに驚かされます。
自分も酒好きのひとりとして考えるに、お酒を飲んで“よい気分”になることはあっても、他人を傷つけようという思いが湧き上がったり、暴力衝動が惹起されたりする、というのはいまいち理解できません。
そこで思い出されるのが、黒沢清監督のホラー映画『CURE』です。
この映画は、ひとことでいえば、「催眠によって人を操り殺人を起こさせる」という物語です。
劇中でも説明されているとおり、いくら催眠でも「その人の倫理観に反すること」「その人の意に反する行為」をさせることはできません。
ということは、映画の登場人物たちには、「殺人」に対して、なんら精神的ブレーキが働いていない(人を殺してもよいと思っている)ことになり、そこがこの映画の怖いところでもあります。
飲酒によって、多かれ少なかれ精神的な抑制が効かなくなることは事実かと思いますが、「他人に暴力を振るうこと」を厭わないという心理が加害者自身も自覚しないところで働いていると思うと、薄ら寒いものを感じてしまいます。

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