『名探偵コナン 銀翼の奇術師』(映画)──ハリウッド映画ではおなじみの「スリル、ショック、サスペンス」を『コナン』風に味付け

「『コナン』の映画はおもしろいヤツとつまらないヤツが毎年交互にやってくる」という説があって、去年は「つまらないヤツ」だったから、そのセオリーでいくと今年はおもしろいはず、というのが今作に対する先入観。

実際は、去年のも決して「つまらないヤツ」だったわけではなく、「生命の危機」(それも大勢の人間のそれ)が起きないというだけで、それなりに楽しめるのだが、年に1回スクリーンで観るのだから、「スリル、ショック、サスペンス」が観たいというのは、まあ心情ではある。

というわけで、今回の見せ場となるのが、「生命の危機」である飛行機上でのアクシデント。このようなシチュエーションはハリウッド映画などで何度となく目にしているもので、それだけに制作陣の真の力量が試されるのだが、期待を裏切らず、きっちりと「スリル、ショック、サスペンス」を見せつけてくれる。

ここで注目しておきたいのは、お互いに正体を隠している者たち(コナンや怪盗キッド、灰原哀など)が持ち前の知恵や能力を発揮して危機を乗り越えていくという、『コナン』特有の設定のおもしろさだ。

つまり誰も彼もが「腹に一物ある」のであり、表面上の実体と裏の真相とにギャップがあるところが作品に深みを与えているのだ。

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