三方が山に囲まれ外界との接触をほとんど断っている村。土葬にした死者が墓から「起き上がり」、村人を襲う──。
「なんだ、これでは『サイレン』(プレステ2ソフト)ではないか?」と声を上げるも、もちろんゲームの方がこちらをヒントにしている。
とはいえ、文庫本全5冊にわたり描かれる「屍鬼」と人間の戦いの迫力はゲームとは比べ物にはならない。この小説を読めば、ゲームの方は戯れ言、子供のママゴトにすぎなかったことがわかる。
文庫本一冊を費やしてその息遣いを丁寧に描いた村人たちがことごとく「屍鬼」にすり替わっていく恐怖はただごとではない。
いつしか登場人物における「屍鬼」の比率が人間のそれを上回わったところで描かれる「屍鬼」の苦悩や悲哀はゲームでは表現されていない。
無論だからといって、ゲームの方が作品として劣っているというわけではない。『サイレン』をプレイした人もそうでない人もぜひ一読を。
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