『名探偵コナン 水平線上の陰謀〈ストラテジー〉』(映画)──期待を裏切らないがゆえに沸き起こる複雑な想い

映画版『コナン』は、おもしろいものとそうでないものが交互にやってくる、というジンクスがあった。去年は「おもしろいもの」だったから、今年はどうなるか不安もあったが、このジンクスは破られたようだ。

豪華客船の中で起こる“密室”での殺人。ミステリーで定番の題材であるが、これをきっちり映像化するのは、実写はもちろんアニメでさえも実は難しい。「アニメだから何でもできるだろう」と素人は考えてしまうのだが、手間と時間とお金をかけなければ実にチープな仕上がりになってしまう。まさに映画版『コナン』だからできるダイナミズム、映画館で観賞するのにふさわしい一作と言えよう。

ミステリーとして優れた物語展開、クライマックスのアクション、主人公たちのロマンスと、ファンが期待する『コナン』が確かにここにはある。あるのだが、どうもそれらの要素が“段取り”と化している気がしないでもない。制作陣の手慣れた作品作りは、観客に「期待に応えてくれた」という安心感を与えながら、「期待を裏切って欲しい」という相反する感情も生じさせるのだ。

「『コナン』だから面白いのは当たり前じゃん」と思われるのは、作品にとっては勝利であると同時に敗北でもある。

もちろん、これは実に贅沢な悩みであって、作品の質が高いからこそ起こる感情であることはまちがいない。

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コメント

  1. 映画「「名探偵コナン 水平線上の陰謀」

    2005年4月公開。公式サイトはこちら。 原作コミックス全巻を持っている私です

  2. アクションアニメ?

     私は名探偵コナンが好きだ。あのあり得ない設定と,へんてこなメカ。映画冒頭の蛇足とも思えるメカ紹介。すべてが好きだ。 しかし!最近のコナン映画には一言 言わせていただきたい。探偵(推理)重視ではなく,ハリウッドで言うところのCG満載のようなアクションの連続アニメになっているのは何故なんだ?私はコナン君に純粋に,そう 純粋に推理していただきたいのだ。コナンにコナンらしからぬアクションは必要ない…

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