『オカルト』(映画)──安っぽくなるほど怖くなる

フィクションをノンフィクションに見せかけた、いわゆる〈フェイク・ドキュメンタリー〉で、『ノロイ』の続編ともいうべき作品だ。ただ、同じ白石晃士監督の『ノロイ』と比較すると、映画としてのたたずまいが安っぽく、全体的にチープな印象が漂う。

しかし、この安っぽさが異様に怖い。

『ノロイ』は、不気味な〈世界観〉と、〈人間〉存在の怖さ、という2つの要素がバランスよく調和していた。

しかし、『オカルト』では〈世界観〉の部分が(確信犯的に)おざなりだ。そして、そうすることで、〈人間〉存在の怖さのほうがより引き立つことになった。

『ノロイ』に登場する不気味な〈儀式〉も、人間の精神の不気味さに起因していた。ひとりのちっぽけな人間の中にある“狂気”。それが他人の目に見える形で表出したものが本作のテープに映った「映像」だ。映像がチープであればあるほど、狂気の度合いは高まっていく。

ラストの「交差点」や「地獄」のシーンは、本作のような安っぽさが効いている。ここをハリウッド映画のように作り込んでしまうと、ここまで効果は上がらない。

ただ、そう考えると、細かいことだが、冒頭の「惨劇」のシーンは、もっと見せてもよかったのではないか。「見せすぎない」ことで恐怖感を高めようとしたのだと思うが、作り事に見えれば見えるほど、怖いシーンになったはずだ。

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