SPEED『あしたの空』(CD)──SPEEDは〈神〉になった

SPEEDはデビュー当初から〈完成〉していた。だから、他のアイドルユニットのように表現力が〈成長〉するのを見る楽しみは味わえなかった。

では、解散後8年ぶりに(そして“つなぎ”としてリリースされたアルバム『BRIDGE』から5年ぶりに)われわれの前に現れた彼女たちは、まったく〈進歩〉していないのか。

もちろん、違う。8年前とは明らかに変化している。

とすると、〈完成〉の先にある〈進歩〉とは何か。

それは、〈神〉になること。

SPEEDは〈神〉になったのだ──。

SPEEDは、その名のとおり、疾走感あふれる楽曲とボーカル、そしてダンスによって、メッセージを発するユニットだ。

彼女たちが表現しているのは、「Body&Soul」「Go!Go!Heaven」などのヒット曲に象徴されるように、全力で走り抜けること、ひいては、精一杯生きることの奨励だ、と一般的には理解されている。

もちろん、一面ではこれは正しい。しかしこれでは、「がんばれ」と言われてもがんばれない、「明るく元気に」と励まされても、そんなふうに生きられない人は、彼女たちの言葉は空虚に響くように思える。

じつは、もがけばもがくほど絶望の海に沈んでいく人へも、救いの手を差し伸べているのがSPEEDであり、いわば静と動、陰と陽の二面性を持つところにその卓越性があった。

いつか愛され愛すべき人へ たどりつける Long Way Home

(「Long Way Home」)

……というメッセージを残してから8年後の今。

その「いつか」は、「あした」であると、SPEEDは歌い上げる。

8年前、彼女たちが指さす先のどこか遠くに見えていた一条の光。今では彼女たち自身がまばゆい光源となって、われわれの足もとを照していた。

SPEEDは、われわれが崇拝すべき、まさに〈神〉になったのだ。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


おしらせ

現在は〈ぎゃふん工房の作品レビュー〉gyahunkoubou.comにて更新しています。

こちらの記事もどうぞ

  1. LMFAO『Sorry for Party Rocking』──元気が出てくる。カラ元気、かもしれないけど(爆

  2. 【声優学入門】クリスとジルの日本語版キャストがハマりすぎて怖い──『バイオハザード リベレーションズ』

  3. 倉木麻衣『OVER THE RAINBOW』──神の視点からこの世のことわりを語る

  4. dream『dream live 2003〜dream world〜』(DVD)──意外にも旧dreamの路線が受け継がれていた最新ライブDVD

  5. 『ぷるるんっ!しずくちゃん』(テレビ)──アニメ版のオリジナルキャラクターはあの大御所ツッコミ役と同じ役回りだった

TOP