就職の相談をしている最中、相手が話しているのを遮ってケータイに出てしまう女子大生。少しでも空腹を覚えるとお菓子やおにぎりなどを口にしてしまい、常に何か食べている状態になっているOL。
いずれも、犯罪というわけじゃない。社会的に直ちに「悪」とされるわけじゃない。本人の生命に関わるわけでもない。
ただ、ちょっと周りの人間に迷惑をかけるかもしれない、客観的に見ると、本人が“不幸”になっているかもしれない、というだけだ。
そんな人々の状況を本書は「依存症」という概念で分析していく。
そもそも社会的に問題とされない行為を扱うわけだから、ともすれば「大きなお世話」であり、取材対象者の人格攻撃に陥ってしまう恐れがある。
ところが本書は、取材対象者に人間的な嫌悪感を覚え、距離を置いたりすることはあっても、その視点は極めて冷静かつ論理的だ。
筆者自身も「買い物依存症」だったという過去を持っているせいか、対象者に向き合う際の真摯な態度に好感が持てる。これは特筆すべき点だろう。
コメント