『バイオハザード 4』(ゲーム)──ルールの変更は「恐怖」ではなく「嫌悪」をもたらした

これまた思い切った変更を試みたものである。客観視点は主観視点になり、武器はお金を貯めて商人から購入。シリーズの象徴であるゾンビの「ゾ」の字も出てこない。

シリーズの基本となる<ルール>そのものを変えているのだから、タイトルは同じでも、まったく別のゲームとなっている。

制作者の意図が「別のゲーム」なのだから、「こんなの『バイオ』じゃない!」という突っ込みは、もはや無意味だろう。

もっとも、そもそもシリーズ第1作目は主観視点で制作されていたらしいから、ここへきて原点に帰ったということもできる。

これまでのシリーズとの相違点として、どうしてもゲームシステムに注目しがちだ。

だが「ホラー」として、より重要なのは「ゾンビでない」という世界観の部分なのである。

今回の敵は「ゾンビ」とは異なり、自分の意思で攻撃してくる。仲間同士でも意思の疎通がある(ように思える)。

敵の強烈な攻撃によって、これまで以上に大ダメージを受ける機会が多いから「恐怖」を感じるのではない。生きている人間の〈悪意〉が猛烈にプレイヤーに迫ってくるから「恐怖」、いや「嫌悪」を覚えてしまうのだ。

「恐怖」と「嫌悪」。どちらも、ホラーというジャンルには欠かせないものだが、ルールの変更はこのプレイ感覚を変えたわけだ。

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