『大日本人』(映画)──誰もが笑えるわけではないが生真面目な制作姿勢は評価できる

世間が悪態をつくほど「駄作」ではないと思うのだが、かといって他人に積極的にオススメできるかと言えば、そうでもないのが悲しい。

「松本人志監督作品」として、どうしても〈笑い〉を期待してしまうが、個人的には1回も笑えなかった。笑える人だけが笑えればいい、必ずしも笑ってもらえなくていい、という制作姿勢なのかもしれないが、「ここは笑わそうとしているのだろうな」と思ってしまうところが、いただけない。

そこが万人にはオススメできない理由であるが、〈笑い〉という要素を棚上げすれば、なかなかどうして、生真面目に作り込んでいることがわかる。

笑いと生真面目さが水と油だとは思わないが、こと映画という表現形態で生真面目さを発揮すると、笑えなくなるというパラドックスが生じるようだ。

〈獣〉のシーンにも笑わせようとしている意図が読みとれるが、予想以上に映像がよく出来ており、おかしみよりもシュールさ、さらには『サイレン2』の闇人に対するような恐怖感すら抱いてしまう。これも笑えない理由のひとつだ。

ただ、〈笑い〉と〈恐怖〉が紙一重であることを考えると、理にはかなっており、人によっては笑えても不思議ではない。

ラストの落とし方も個人的には満足だ。

事前の「警告」にも生真面目さを感じることができ、したがって蛇足のような気もしたが、些細な問題にすぎない。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


こちらの記事もどうぞ

  1. 死刑否定論者が考える「死刑肯定論」──『ジョジョの奇妙な冒険』にみる殺人に対する〈裁き〉

  2. 『ファイナル・デッドブリッジ』──ドラえもんのひみつ道具のように物語が無限に作れるフォーマット

  3. 衿野未矢『依存症の女たち』『依存症の男と女たち』(本)──「依存症」の相手に向き合う態度に好感が持てる

  4. 【声優学入門】「ルパン三世」新キャスト──山ちゃんが一番違和感があった理由とは?

  5. 『dream party 2』(DVD)──ボーカリストの2分化により失われる一体感

TOP