『ドラえもん』リニューアル版(テレビ)──世代を越えるとは、こういうことだったか

永年にわたり親しまれた声優陣が一新されたことで話題の番組。アニメファン、洋画の吹き替えファンとしては、正式な配役が発表される前に、心の中でいろいろキャスティングしたりして楽しんでいたのだが、予想はまったくのハズレ(当然か)。

実際の声優陣もほとんど聞き覚えのない名前ばかりであった(その一方で、脇が実力派で固められているところは抜け目ない)。

キャラクターはそのままで、声優だけが交代する場合、よくとられるのが“先代のモノマネをする”という方法だ。例として、カツオくん、コロンボ、アラレちゃん、ミンキー・モモなんかを想起してもらえばいいだろう。

だが、今回の『ドラえもん』リニューアル版は、先代のイメージを受け継がず(というより、真似をするのはプロでも不可能?)、登場キャラクターの持ち味さえも一新するという“抜本的な改革”に乗り出した。

つまり、リニューアルは声優だけでなく、どうせやるならばと、アニメとしての絵柄そのものも(もちろん、原作をおろそかにはせずに)変えてしまったのだ(とくに背景においてそれが顕著だ)。

物語そのものは、これまでと変わるところはなかったようだが、今後の声優さんの役作りによっては、話作りにも影響を及ぼすかもしれない。

さて、このような“抜本的な改革”によって生み出された『ドラえもん』は、実に現代的なパワーを持った作品となった。

とにかくドラえもんとのび太のセリフが多く、しかも早い。物語の展開もせわしなく、情報量も膨大だ。

もちろん、これは欠点ではなく、現代人の生活のスピードに合っているのだろう。おそらく今の子供ならなんなくついていけるリズムだと思われる。リニューアル版第1回目の放送は、大人でも十分に楽しめたはずだ。

今回の声優さんに違和感を覚える人も多いだろう。人が違うのだから当然である。一方で、違和感を感じなかった、という人もいるのではないか。それはこのような制作姿勢の変化も要因になっているのだ。

アニメ制作技術の進歩、ということももちろんあるだろうが、絵柄が変わり、声優が変わり、リズムが変わっても楽しめるのは、世代を超える普遍的な力強さを原作が持っていたからであろう(たとえば『巨人の星』を現代風にアレンジしても、これほど楽しめまい)。

リニューアル版の初回を観て、原作版とアニメ版、両方の魅力を再認識した次第だ。

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