根岸泉『誰にも言えない 特撮映画の舞台裏』(書籍)──「大変だけど楽しい」と思いたいときに読みたい本

2か月ほど前、年末に公開される『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』の特撮スタジオを取材した。そこで抱いたのは「特撮映画を作るのって、根気のいる面倒な作業だな」という、文字にすると非常に薄っぺらい感想であった。

本番が始まるのを待つこと2時間。カメラが回っていたのは10秒ほど。しかもNG。ドッと疲れが出た。ただ観ているだけの私がそう思ったくらいだから、スタッフの人たちの徒労感はもっと濃かったにちがいない。

究極的には、どんな仕事も大変にはちがいないのだが、特撮映画というのは、素人にもわかりやすい「大変さ」が伴う現場のひとつだろう。

この『誰にも言えない 特撮映画の舞台裏』は、その名のとおり、特撮映画づくりの苦労をつづった本である。筆者は『ガメラ』『ゴジラ』『ウルトラマン』に携わった操演技師の根岸泉氏。本書で展開されているのは、もちろん「苦労話」ではあるが、「大変だけど楽しい」という思いが伝わってくるところに好感が持てる一冊だ。『ガメラ3』のメイキングビデオ『GAMERA1999』でも、根岸氏のユーモラスな人柄を垣間見ることができる。

そもそもウェブ上で公開されていた文章だけあって肩ひじ張らず気楽に読める本だが、実は仕事や人生の意義に疑問を持ったときに、手にしてみるとよい本かもしれない。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


こちらの記事もどうぞ

  1. 【声優学入門】『バイオハザード6』が日本語吹き替えでないから脳内アテレコしてしまおう

  2. 「館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」に行ってきました

  3. え? 『バイオハザード オペレーション・ラクーンシティ』ってクソゲーなの!?

  4. 『バイオハザード オペレーション・ラクーンシティ』のハンクさんに見る“理想の上司像”

  5. 新ブログの6月の最新記事をご紹介!

TOP