『イノセンス』(映画)──最新技術を観たり聴いたりするのではなく「哲学」を読む作品

『スチーム・ボーイ』『ハウルの動く城』といった作品を観る前に判断するなら、アニメ史上の最高傑作であることは間違いない。

ただ、監督はもちろん、作画、CG、音楽など、制作陣のクレジットを眺めてみれば、いわばよく出来ているのは当然であって、期待に応えてくれたという思いはあるけれど、隠れた名作というわけではもちろんない。

しかも、映像や音の面で質・技術ともに最高レベルの作品でありながら、実はこの作品、「観る・聴く」ではなく、「読む」映画なのだ。

これは、押井作品全般に言える傾向だが、映画のストーリーを述べようすると、実はどんな話だったか曖昧で、むりやり述べたとしても、しごくシンプルなものになってしまう。

なぜなら、押井作品は、物語を見せるのではなく、「哲学」を語る映画だからだ。

アクションの見せ場ももちろん多いが、画面にほとんど動きがなく、ひたすら人物がセリフをしゃべっているシーンもかなりの割合を占めている。

登場人物のセリフをそのまま引用して、「こういう哲学が語られた」とすることはできず、押井監督がこの作品に込めた「哲学」は、観客が自ら思考しなければならない。そのために、

まったくドラマが進行しない場面が、この映画には随所に設けられている。

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コメント

  1. イノセンス

    イノセンスを観ました。
    いわずと知れた、押井監督の攻殻機動隊の続編ですね。
    映像は、さすが日本のアニメ、CGクリエイターを集めただけあり、素晴らしい映像でした…

  2. はじめまして。
    トラックバックさせていただきました。
    「イノセンス」にはおしゃる通り、哲学でしたね。
    最高傑作だと思います。
    「読む」映画。的確な表現だと思いました。
    また、ブログ読ませていただきます。

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