スピルバーク監督の「異星人もの」といえば、ご存知『E.T.』という映画がございます。しかし、わたくしはどちらかというと、同じ時期に公開された『遊星からの物体X』という作品のほうが好きでございまして、つまり「エイリアン」を扱うなら、生温い内容ではなく、徹底的に悪者として描いてほしいというわけでございます。
この『宇宙戦争』も、「戦争」というタイトルとは裏腹に、「親子愛」なんぞを中心に据えた、「生温い」映画なのではないかと予想し、映画館へ足を運ぶことをしなかったのでございますが……。
やられた。
見くびっていた。
失敗した。
映画館へ行くべきだった。
怒濤のように押し寄せる、後悔の念……。
たしかに、物語の中心は「親子愛」とか「家族愛」であろう。しかし、それを縦軸とするなら、横軸はまちがいなく「戦争」だ。
とくに感心したのが、凶悪な異星人による「侵略」の描写だ。ありふれた日常が一変、阿鼻叫喚の地獄絵図と化す様を、侵略側ではなく、蹂躙される側(人間)からの視点で描く。繊細かつ丁寧な演出は、まさにスピルバーク監督の本領発揮という感じだ。
「『戦争』というわりには、戦っているシーンがほとんどないじゃないか」と批判する声もあるかもしれない。
しかし、人々は為す術もなく右往左往するしかない、というのが、今まさに現実の世界で起こっている「戦争」ではないのか。
もちろん、映画という虚構が必ずしも現実を模倣する必要はない。しかし、人間と異星人の死闘が繰り広げられ、なんだかんだで人間が勝つ、というのは、すでに『インディペンデンス・ディ』という映画がやってしまっている。同じものを、天下のスピルバーグ先生が作ってもしょうがない、という考えるほうがよかろう。
侵略シーンはDVDで観ても恐ろしゅうございましが、映画館でしたらさぞかし……と、かえすがえす残念でございます。
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