『笑の大学』(映画)──舞台と映画の本質的な違いとは? 2005.06.12 原作である舞台版をテレビで観て、この映画版をDVDを観る、というのは愚の骨頂であろう、『笑の大学』という作品関しては。そんな「愚の骨頂」をやらかした者が拙い想像力を駆使して、原作(舞台)とこの作品(映画)の違いを考えると、こうだ。『笑の大学』という物語は、密室の中で行われる2人だけのやりとり
『予言』(映画)──「ホラー映画とは何か」を考えさせられる 2005.05.06 鶴田法男監督といえば、「とにかく幽霊が怖い」という作風で知られる一方、「心が温まる」作品も数多く手がけている。この『予言』は、それら相反する二つの要素をひとつの作品に入れ込んだ意欲作であるが、鑑賞した直後にあったのは、「ホラー映画としては中途半端だ」という違和感であった。しかしながら、単なる<駄
『名探偵コナン 水平線上の陰謀〈ストラテジー〉』(映画)──期待を裏切らないがゆえに沸き起こる複雑な想い 2005.04.20 映画版『コナン』は、おもしろいものとそうでないものが交互にやってくる、というジンクスがあった。去年は「おもしろいもの」だったから、今年はどうなるか不安もあったが、このジンクスは破られたようだ。豪華客船の中で起こる“密室”での殺人。ミステリーで定番の題材であるが、これをきっちり映像化するのは、実写
『ドラえもん』リニューアル版(テレビ)──世代を越えるとは、こういうことだったか 2005.04.16 永年にわたり親しまれた声優陣が一新されたことで話題の番組。アニメファン、洋画の吹き替えファンとしては、正式な配役が発表される前に、心の中でいろいろキャスティングしたりして楽しんでいたのだが、予想はまったくのハズレ(当然か)。実際の声優陣もほとんど聞き覚えのない名前ばかりであった(その一方で、脇が
『THE JUON/呪怨』(映画)──シリーズのファンとしては複雑な心境の作品 2005.03.08 そもそも『呪怨』シリーズは、ハリウッド映画に代表される“基本的な映画の手法”から解放されているところに特徴がある。そんな作品をハリウッドで作ってしまえば、もはや『呪怨』ではない、と「片隅」からこのシリーズを見守っている者としては考えてしまう。オリジナルの監督みずから手がけている映画だから、純
『ドッグヴィル』(映画)──“人間の本質”を炙り出す表現形式 2004.11.22 だだっ広いスタジオの床に道や建物の境界を表す線がひかれている。少しばかりの小道具として椅子や机、ピアノなどが置かれている。この映画の3時間という長い物語が展開するのはそんな場所だ。実に珍しい趣向のこの作品、当初は、劇場で演劇を観るようなものかなと思ったが、映画である以上、フレームや編集という要素が入
『ソウ』(映画)──キミは“ゲーム”に勝てるか? 2004.11.17 ひとつゲームをしよう。ルールは簡単。1時間43分の上映時間中に“真犯人”を当てる。なに、“殺人”を強要される主人公たちに比べれば気楽なものだ。だが、制作者たちの思惑より先に観客が真相を知ることは難しいだろう。もちろん、犯人当てのための材料はすべて劇中に提示されているから、理論的には不可能ではない。だ
『キューティーハニー』(映画)──「不自然さ」を突き詰めると「絵に描いたような」ヒロインが完成 2004.11.13 たとえば、これはあくまでアニメではなく実写である、というのがひとつ。そして、大昔を舞台にした時代劇でも遠い未来を描いたSFでもないというのがもうひとつ。どう考えても「不自然」な作品にならざるを得ない要素が目白押しである。ここでいう「不自然さ」とは、荒唐無稽だとかリアリティがないということでは
『キル・ビル Vol.2』(映画)──「長いひとつの映画の後半部分」という側面をどう見るか 2004.11.13 『キル・ビル』シリーズはもともと長いひとつの作品だったのを製作中に前後編に分けられたことはよく知られている。本作品の鑑賞にあたって、この事実をどう見るかだ。「元はひとつの作品なんだから、テンポ、テイストは統一すべき」なのか、「いや、製作事情はどうあれ、別の独立した作品として考えるべき」なのか。それに
『イノセンス』(映画)──最新技術を観たり聴いたりするのではなく「哲学」を読む作品 2004.10.31 『スチーム・ボーイ』『ハウルの動く城』といった作品を観る前に判断するなら、アニメ史上の最高傑作であることは間違いない。ただ、監督はもちろん、作画、CG、音楽など、制作陣のクレジットを眺めてみれば、いわばよく出来ているのは当然であって、期待に応えてくれたという思いはあるけれど、隠れた名作というわけ