『ブラインドネス』(映画)──他の作品が避けてきた描写に真摯に取り組んだ姿勢を評価したい 2009.07.31 「主人公を除く全員の目が見えない」という設定は新しいものの、描こうとしていることは、実はありふれたものである。ただ、このような状況になったときに当然起こりうる問題を、他の作品がうまくごまかしたり、絶妙に回避してきたのに対し、この作品では、真正面から真摯に描いていて、そこがすばらしいと思う。どのよ
『叫』(映画)──もし幽霊がいるとしたらこんな感じ 2009.07.31 これは、まあアレだな、ひとことで言えば「幽霊というものが存在するとしたら、こんな感じ」というのを提示した映画ってことになる。『回路』でも「幻だと思ったら手で触れることができちゃった幽霊」が出てきてビックリしたが、今回はなんのためらいもなく肩に手をやっている。「一見生きている人間と変わらないんだけど、
『崖の上のポニョ』(映画)──“ポニョの魔法”にうまくかかることができれば…… 2009.07.19 “ポニョの魔法”は、自分を人間の姿に変えたり、模型を少し大きくするだけ。キキがホウキに乗って空を飛ぶのと同じくらいのちっぽけなものだ。だから、すべての人がかかる魔法ではないのかもしれない。『千と千尋の神隠し』以降の宮崎駿作品の楽しみ方は、それまでの作品とは大きく異なる。アニメーションが見るものに
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(映画)──「破」壊したもの、しなかったもの 2009.07.12 サブタイトルに「破」とあるとおり、新劇場版の物語の山場であり、「破」壊のシーンが印象的な作品であった。しかし、「破」壊したものと同時に、「破」壊しなかったものに目を向けることで、本質が見えてくるような気がする。『序』で予告されていたように物語は「破」綻し、まったく新しいストーリー展開になるか
『バイオハザードIII』(映画)──ありふれたモチーフを上手く料理できなかった 2008.05.11 近所のスーパーで買ってきた食材でも、一流の料理人なら最上級の御馳走が作れるように、ありふれた題材を扱っても、優れたクリエイターなら、とびきりの娯楽映画を作ることができるのは『バタフライ・エフェクト』が証明している。この『バイオハザードIII』に登場する“食材”は、「世界崩壊後の荒野」「マッドサイエン
『ソウ4』(映画)──『ソウ』の続編の制作は穴の空いたボートで海を渡るようなもの 2008.05.11 シリーズ第1作目と比べて「どうこう」言うことはしない。言いたくなる気持ちはわかる。わかるけども、続編の制作は、作り手からすれば、穴の空いたボートに乗っているようなもの。出来栄えが悪くなっていくのは、シリーズものの宿命だ。いかに沈没せずに、陸にたどり着くか。沈没さえしなければよいではないか、という
『バタフライ・エフェクト』(映画)──ありふれたテーマなのに最上級の娯楽作品に仕上げた手腕に脱帽 2008.05.11 れてきたありふれた話である。最近の映画でいえば、『タイムマシン』に似ている。だが、あちらは、主人公と脚本家が「恋人」に執着するあまり視野狭窄に陥ってしまい、物語としてまとまりのないものになっているのに対し、『バタフライ・エフェクト』の主人公と脚本家は、恋人だけでなく、友人や家族にまで気を配っているた
『クローバーフィールド/HAKAISHA』(映画)──ネタが割れても十分楽しめる 2008.05.04 「ネタバレ注意」って言ったって、自由の女神の首がすっ飛んでくる予告編を見たら、おおよその内容は想像できちゃうんだよな。だから、「ネタバレ注意」ってところをあんまり強調しないほうがいいのではないか。たしかに、あらかじめ詳しい内容を知りすぎないというのは、映画鑑賞のイロハではある。ただ、本作品の
『大日本人』(映画)──誰もが笑えるわけではないが生真面目な制作姿勢は評価できる 2008.03.30 世間が悪態をつくほど「駄作」ではないと思うのだが、かといって他人に積極的にオススメできるかと言えば、そうでもないのが悲しい。「松本人志監督作品」として、どうしても〈笑い〉を期待してしまうが、個人的には1回も笑えなかった。笑える人だけが笑えればいい、必ずしも笑ってもらえなくていい、という制作姿勢な
『コワイ女』(映画)──〈完成度〉は高いが〈満足度〉が低いワケは…… 2008.03.03 全体的にけっして出来が悪いわけではない。まったく無名な監督が作ったものであったなら、「なかなか新しい感覚のホラー監督が登場したぞ」と、かつて「片隅」「4444444444」を見たときのように、カルチャーショックと嬉しさを覚えたに違いないのだが、雨宮慶太(「カタカタ」)、豊島圭介・清水崇(「うけつぐも