『フォーン・ブース』(映画)──趣向」の面白さだけじゃないのがエラい 2004.10.24 電話ボックスの中だけで物語が展開するという非常に珍しい趣向の作品。こういったタイプの作品は、えてして「趣向」の面白さが先に立ち、肝心要の脚本がおろそかになりがちだが(そうだとしても映画としては成立し、評価されることが多いのだが)、中だるみすることもなく、最初から最後までまったく目が離せない作品に
『昭和歌謡大全集』(映画)──タイトルから想像するとおりの…… 2004.10.24 『昭和歌謡大全集』という題名を聞けば、誰もが懐古趣味というかノスタルジーに浸ることを目的とした作品を想像するだろう。しかし、いざフタを開けてみると、オバサンと若者が殺し合うという、ゆる〜い『バトル・ロワイアル』とも言うべき、ブラックな映画なのであった──実際はそれがわかってて観るのだが。昭和
『ファインディング・ニモ』(映画)──CG技術に頼ってない 2004.09.26 奇しくも『ディー・プルー』に引き続き、海で暮らす生き物たちを題材にした作品の批評となった。かたやドキュメンタリー、かたやCGアニメ。両極端の方向性を持った2作品ながら、目指すところは同じだ。つまり、映像としていかに魅力的に見せるか、映画としていかに面白く作るか。映画作りにおいて、素人でも
『ディープ・ブルー』(映画)──「自然のありのままの姿」でないところが良い 2004.09.25 海で暮らす生物たちの姿を捉えたドキュメンタリー……というだけなら、子供のころ教育番組か何かで目にしているはずだし、大人になってからも同種の番組が放映されているのを見ているはず。しかし、この作品は何かが決定的に違う。「製作7年、撮影フィルム7000時間、ロケ地200カ所」。費やした金と時間がケ
『デッドコースター』(映画)──これぞ正しい人間の殺し方 2004.09.24 飛行機の墜落事故、ハイウェイでの大規模玉突き事故を免れた幸運な人々。しかし、実は彼らは<死>の運命から逃れたわけではなかった。<死>のリストに載ったものは必ず死ぬ。手を変え品を変え襲いかかる<死>をかわしつつ、<死>のリストを書き換えるべく、主人公たちが奮闘する……という内容の映画ではあるが、実
『冬のソナタ』(テレビ)──これはラブストーリーではなくホラーサスペンスである 2004.08.23 本作品は純愛物語ではなく恐怖物語である。まずこの前提条件を受け入れるところから始めるべし。「ヨン様フィーバー」だの、「今の日本にはないピュアなドラマ」だのといった前評判に惑わされて敬遠していた人も、この「前提条件」を認識することで、楽しみがぐっと広がるってもんだ。この作品を「恐怖の物語」と評する根
『光の雨』(映画)──事件を客観化して本質に迫ろうという狙いはわかるが 2004.08.15 1972年に起こった連合赤軍同志リンチ殺人事件を題材にした映画。単純に言えば、『突入せよ!「あさま山荘」事件』(原田眞人監督)の前の物語を、警察の側からではなく彼らの側から描いている。と、「単純に言えば」そうなるのだが、この映画の登場人物は、「連合赤軍同志リンチ殺人事件を題材にした映画」を撮っている
『ティアーズ・オブ・ザ・サン』(映画)──この際<マクロ>の視点は捨てて鑑賞せよ 2004.08.08 紛争地帯で医療活動をしているアメリカ人医師を救うため、特殊部隊が現地へ向かう。主人公の大尉は、当の医師だけでなく、避難民までも救うことを決意したため、任務は危険な方向へと向かい出す。そもそも『ダイ・ハード4』として企画されていたと聞き、軽いノリを期待していたのだが、予想以上に“重い”のに驚いた。
『g@me.』(映画)──東野圭吾のテイストを忠実に再現 2004.07.25 「妾の子供ゆえにすさんだ性格」というキャラクターを演じる仲間由紀恵を見て、「なんか品がありすぎてリアリティがないな」と思いながら見ていると、終盤しっぺがえしを食らう。「品」の良さは仲間由紀恵の計算だったというわけだ。ストーリーよりもそっちの方がびっくりだ。東野圭吾の作品はほとんど読んでいるつもり
『渋谷怪談』『渋谷怪談2』(映画)──『呪怨』にゆかりのある監督だからといって物真似はいけない 2004.07.18 予想以上に“怖い”仕上がりになっている。ということは、日本のホラーの本流に位置する作品ということであるが、キャラクター造形、恐怖演出の面から見て、どうしても「これじゃ『呪怨』だよ」という思いは拭えない。『呪怨』のことは『呪怨』に任せておけばいいのであって、わざわざ別の作品で『呪怨』をやることはな