『裏ホラー』(DVD・ネット)──女性が“汚される”ことへの嫌悪と憧憬 2008.12.30 ホラー ホラー・プロデューサーの一瀬隆重氏が仕掛けた新感覚の恐怖。『ほんとにあった呪いのビデオ』などのように、〈幽霊〉が落とし所でないところが新しい。では、『裏ホラー』で恐怖のエッセンスとなっているものはなにか。それは、女性が“汚される”“壊される”“犯される”ことへの嫌悪と憧憬である。大きな白い紙
『サイレン ニュートランスレーション』(ゲーム)──傑作ホラーゲームの背景に見え隠れする“さびしさ” 2008.09.14 ゲーム 傑作──。これはまちがいない。舞台となる「羽生蛇村」の〈空気感〉、プレイヤーや敵キャラクターの〈存在感〉の表現に、あらためてプレイステーション3の性能の高さを見ることができる。海外ドラマを観ているかのような趣向も秀逸。恐怖の舞台に実際に入り込んでしまったような感覚は、映画や小説では味わえないゲームな
『バイオハザードIII』(映画)──ありふれたモチーフを上手く料理できなかった 2008.05.11 映画・テレビ 近所のスーパーで買ってきた食材でも、一流の料理人なら最上級の御馳走が作れるように、ありふれた題材を扱っても、優れたクリエイターなら、とびきりの娯楽映画を作ることができるのは『バタフライ・エフェクト』が証明している。この『バイオハザードIII』に登場する“食材”は、「世界崩壊後の荒野」「マッドサイエン
『ソウ4』(映画)──『ソウ』の続編の制作は穴の空いたボートで海を渡るようなもの 2008.05.11 映画・テレビ シリーズ第1作目と比べて「どうこう」言うことはしない。言いたくなる気持ちはわかる。わかるけども、続編の制作は、作り手からすれば、穴の空いたボートに乗っているようなもの。出来栄えが悪くなっていくのは、シリーズものの宿命だ。いかに沈没せずに、陸にたどり着くか。沈没さえしなければよいではないか、という
『バタフライ・エフェクト』(映画)──ありふれたテーマなのに最上級の娯楽作品に仕上げた手腕に脱帽 2008.05.11 映画・テレビ れてきたありふれた話である。最近の映画でいえば、『タイムマシン』に似ている。だが、あちらは、主人公と脚本家が「恋人」に執着するあまり視野狭窄に陥ってしまい、物語としてまとまりのないものになっているのに対し、『バタフライ・エフェクト』の主人公と脚本家は、恋人だけでなく、友人や家族にまで気を配っているた
『クローバーフィールド/HAKAISHA』(映画)──ネタが割れても十分楽しめる 2008.05.04 映画・テレビ 「ネタバレ注意」って言ったって、自由の女神の首がすっ飛んでくる予告編を見たら、おおよその内容は想像できちゃうんだよな。だから、「ネタバレ注意」ってところをあんまり強調しないほうがいいのではないか。たしかに、あらかじめ詳しい内容を知りすぎないというのは、映画鑑賞のイロハではある。ただ、本作品の
『大日本人』(映画)──誰もが笑えるわけではないが生真面目な制作姿勢は評価できる 2008.03.30 映画・テレビ 世間が悪態をつくほど「駄作」ではないと思うのだが、かといって他人に積極的にオススメできるかと言えば、そうでもないのが悲しい。「松本人志監督作品」として、どうしても〈笑い〉を期待してしまうが、個人的には1回も笑えなかった。笑える人だけが笑えればいい、必ずしも笑ってもらえなくていい、という制作姿勢な
『コワイ女』(映画)──〈完成度〉は高いが〈満足度〉が低いワケは…… 2008.03.03 映画・テレビ 全体的にけっして出来が悪いわけではない。まったく無名な監督が作ったものであったなら、「なかなか新しい感覚のホラー監督が登場したぞ」と、かつて「片隅」「4444444444」を見たときのように、カルチャーショックと嬉しさを覚えたに違いないのだが、雨宮慶太(「カタカタ」)、豊島圭介・清水崇(「うけつぐも
『怪~ayakashi~化猫』──アニメだからこそ人間の恐るべき本質に迫る 2008.01.01 映画・テレビ 日本製ホラーのなかで、アニメというジャンルはノーマークであった。いざフタを開けてみると、これがまた恐るべき表現形式であることを思い知らされた。この『化猫』は、アニメといっても、いわゆるアキバ系の売れ線の絵柄とは一線を画する。浮世絵をモチーフにしたような、まさに日本の伝統的様式美の趣。およそホラー
DRM『DRM』(CD)──ユニット名の変更で変わるもの、変わらないもの 2007.11.25 音楽 dreamの良いところは、あまり売れていないことである。本来なら、エイベックスに所属するアーティストとしては短所となるはずだが、ここへ来て、この短所が長所へと変わった。すなわち「売れていない」=「知られていない」=「アンダーグラウンドの香りがする」のだ。グループ名の変更は、大きな転換とな