『ランド・オブ・ザ・デッド』(映画)──ただのゾンビ映画ではないことは先刻承知。ではプラス要素とは? 2005.09.11 映画・テレビ 世の中にはびこるゾンビ、ならぬゾンビ映画やゾンビゲーム。それらの基礎となる「ゾンビ」の概念を最初に創造し、その本質をもっとも知り尽くした監督が作ったゾンビ映画の決定版だ。「ゾンビが出てきて、ああ怖い!」などという映画でないことは、ロメロ作品をひとつでも観たことのある者ならば先刻承知なのであるが、
『ノロイ』(映画)──ホラープロデューサー・一瀬隆重の最新作は意外にも伝統的恐怖だったが…… 2005.08.21 映画・テレビ 一瀬隆重氏がこれまでプロデュースしヒットした『リング』『呪怨』といったホラー映画は、「演出」がキモの作品だ。つまり観ている人は、あくまで嘘、作り物としてこれらの映画を楽しんでいる。しかし、本来ジャパニーズホラーといえば、「心霊実話もの」という言葉に象徴されるように、虚構と現実の狭間を巧みに行き来
『笑の大学』(映画)──舞台と映画の本質的な違いとは? 2005.06.12 映画・テレビ 原作である舞台版をテレビで観て、この映画版をDVDを観る、というのは愚の骨頂であろう、『笑の大学』という作品関しては。そんな「愚の骨頂」をやらかした者が拙い想像力を駆使して、原作(舞台)とこの作品(映画)の違いを考えると、こうだ。『笑の大学』という物語は、密室の中で行われる2人だけのやりとり
押井守『これが僕の回答である。1995-2004』(本)──「アニメ」だけでなく「人生」の作り方も書いてある 2005.05.29 書籍・雑誌 名実ともに日本を代表するアニメ監督である押井守氏のエッセイ集。本書で語られているのは、『パトレイバー』『うる星やつら』『イノセンス』といった具体的な作品の裏話であり、アニメ業界全体の問題点であり、映画監督、表現者としての喜びや苦悩だ。だから、そういった話に興味のある人は、存分に楽しめることだろう
春橋哲史『太陽系を縦断せよ』(本)──往年の本格SFの匂いが漂う本書は<物語>ではなく<ディティール>を読め 2005.05.12 書籍・雑誌 タイトルはスバリ『太陽系を縦断せよ』。ようするに「太陽系を縦断」する話だとすぐわかる。まさに直球。このタイトルに象徴されるように、往年の「宇宙モノ」小説を現代に復活させた正統派の本格SFなのである。もくじを開いてみよう。「第2章 出港」「第3章 事故」「第4章 復旧」……などと、ストーリー展開が
『予言』(映画)──「ホラー映画とは何か」を考えさせられる 2005.05.06 映画・テレビ 鶴田法男監督といえば、「とにかく幽霊が怖い」という作風で知られる一方、「心が温まる」作品も数多く手がけている。この『予言』は、それら相反する二つの要素をひとつの作品に入れ込んだ意欲作であるが、鑑賞した直後にあったのは、「ホラー映画としては中途半端だ」という違和感であった。しかしながら、単なる<駄
『名探偵コナン 水平線上の陰謀〈ストラテジー〉』(映画)──期待を裏切らないがゆえに沸き起こる複雑な想い 2005.04.20 映画・テレビ 映画版『コナン』は、おもしろいものとそうでないものが交互にやってくる、というジンクスがあった。去年は「おもしろいもの」だったから、今年はどうなるか不安もあったが、このジンクスは破られたようだ。豪華客船の中で起こる“密室”での殺人。ミステリーで定番の題材であるが、これをきっちり映像化するのは、実写
『ドラえもん』リニューアル版(テレビ)──世代を越えるとは、こういうことだったか 2005.04.16 映画・テレビ 永年にわたり親しまれた声優陣が一新されたことで話題の番組。アニメファン、洋画の吹き替えファンとしては、正式な配役が発表される前に、心の中でいろいろキャスティングしたりして楽しんでいたのだが、予想はまったくのハズレ(当然か)。実際の声優陣もほとんど聞き覚えのない名前ばかりであった(その一方で、脇が
『バイオハザード 4』(ゲーム)──ルールの変更は「恐怖」ではなく「嫌悪」をもたらした 2005.03.21 ゲーム これまた思い切った変更を試みたものである。客観視点は主観視点になり、武器はお金を貯めて商人から購入。シリーズの象徴であるゾンビの「ゾ」の字も出てこない。シリーズの基本となる<ルール>そのものを変えているのだから、タイトルは同じでも、まったく別のゲームとなっている。制作者の意図が「別のゲーム」
『THE JUON/呪怨』(映画)──シリーズのファンとしては複雑な心境の作品 2005.03.08 映画・テレビ そもそも『呪怨』シリーズは、ハリウッド映画に代表される“基本的な映画の手法”から解放されているところに特徴がある。そんな作品をハリウッドで作ってしまえば、もはや『呪怨』ではない、と「片隅」からこのシリーズを見守っている者としては考えてしまう。オリジナルの監督みずから手がけている映画だから、純